人材確保と定着,セミナー 講演会 シンポジウム

 2025年11月19日(水)、三重県総合文化センター多目的ホールにて、2025年三重県地方自治研究集会を開催しました。
 本集会のテーマは「人材確保のための働きがいのある職場づくり~仕事の魅力について考える~」です。
 最初に主催者である自治労三重県本部 原田中央執行委員長から、「自治研活動は、地方行政や公共サービスのあり方を組合自らが研究・実践する重要な取り組みである。しかし近年、少子高齢化に伴う人手不足や受験者減、早期退職の増加により公務職場の欠員が深刻化し、通常業務に追われる状況が続いている。安定した行政運営と質の高い公共サービスの維持には人材確保が不可欠であり、県本部では労使交渉による環境改善とあわせ、自治研活動を通じた人材確保の研究にも取り組んでいる。今回の集会が活動活性化の契機となることを期待している。」との挨拶をいただきました。

 研究発表に先立ち、九州大学大学院法学研究院教授 嶋田暁文氏より『自治体職員の自己成長・自己実現と公務のやりがい ~自治体と職員に求められることと、自治研活動の有用性~』のテーマで基調講演をいただきました。
 「自治体では若手職員の自己都合退職や志望者減少が深刻化しており、その背景には自己成長・自己実現の機会不足がある。入庁前後の成長支援、柔軟な働き方、人事制度改善など職場環境の改革が求められる一方、職員自身の意識変革も重要である。こうした課題に対し、自治研活動は成長機会の提供や組織改善の提言などの役割を果たし、職員の成長とやりがいにつながる。」という職場・職員双方の変革を必要とすることや変革の一助として自治研活動が有効であることを実例を交えてわかりやすく説明いただきました。

 午後からは、当センター主任研究員・畑が、県内自治体の協力のもと当センターが設立した『人口減少時代における地方自治体の人材確保と定着』研究会を代表し、同テーマについての中間研究報告を行いました。地方公務員の現状や受験者・離職者の推移、これらを踏まえた国の施策を解説するとともに、県内自治体職員を対象とした仕事のやりがいおよび職場への愛着に関するアンケート結果を基に、エンゲージメント向上に向けた方針を示しました。

 また、地方自治に関する課題解決を考えるために自治労三重県本部が中心となり結成された2つのワーキンググループによる報告も行われました。
 『各種選挙における投票率の向上について』をテーマとしたワーキンググループからは、高等学校・大学の生徒およびその親世代にアンケートを実施した結果、親子連れ投票の経験が将来の投票行動に影響することが確認され、投票環境の利便性向上や主権者教育の充実、家庭での政治学習の促進が若年層の投票率向上に有効であり、実施後の効果検証や関係機関の連携も重要であることが報告されました。
 『地方公務員の人材確保』をテーマとしたワーキンググループからは県内自治体の職員確保のためのPR戦略について各自治体にアンケートを行ったうえで、「採用試験における対策」として川崎市で行われている職場見学会についての有効性、「働き方改革」として県内自治体でも導入が進んでいる開庁時間の短縮が業務や職員に与える好影響についてそれぞれ報告されました。

 続いて、本集会に向けて県内自治体の3つの職員組合等より寄せられた自治研自主レポートの表彰が行われました。

【最優秀賞】松阪市職員組合  『松阪駅周辺商店街散策フィールドワークの実施』
【奨励賞】 三重県職員労働組合『三重県職員の離職増加や採用試験における受験者数の減少にかかる原因分析とその対策』
【奨励賞】 熊野市職員労働組合『熊野市役所におけるDXと生成AIの導入・活用状況について』


 最優秀賞に選ばれた松阪市職員組合からは、『松阪駅周辺商店街散策フィールドワークの実施』をテーマとしたレポートが発表されました。フィールドワークを通じて商店街の魅力と課題を整理し、特産品マーケットやオンライン発信などを提案。さらに職員アプリとの連携による継続的支援も開始し、地域課題の理解と職員間の連携、施策への活用を目指す取り組みが報告されました。

ご参加いただいた皆様、ありがとうございました。

セミナー 講演会 シンポジウム

2025年10月27日(月)、三重地方自治労働文化センター大会議室において、当センター主催「自治体におけるこれからの政策のあり方と行政デザインセミナー」を開催しました。

講師 大阪国際大学 経営経済学部 准教授 湯浅 孝康 氏

【プロフィール】
京都市役所職員や大阪国際大学講師を経て、現在の職にてご活躍されておられます。
自治体職員としては総務課で庶務や人事などの実務を担当され、行政の現場に根ざした経験を積まれました。
行政学を基盤に、公共政策や地方自治、評価制度などをテーマに研究を続けておられます。

著書に『政策と行政の管理―評価と責任―』があり、共著として『地方自治を問いなおす―地方自治の実践がひらく新地平―』、
『地域を支えるエッセンシャル・ワーク―保健所・病院・清掃・子育てなどの現場から―』など多数。
2024年12月からは、日本評価学会の理事・事務局次長も務めておられます。


 昨今の自治体行政は多種多様で専門的な課題への対応が求められています。限られた職員でこれらに対応するためには、職員一人ひとりのスキルアップを図るとともに、地域が抱える課題を適正に捉え、対策を立案、具現化する能力が必要となります。
 そこで近年の政策立案のトレンドを学ぶとともに、それを活かすための組織づくりについて学ぶことを目的にセミナーを開催しました。

 講師の湯浅様からは、社会生活における国や地方自治体が与える影響力の変遷、現代に求められる政策立案と行政職員の能力、政策形成と政策実施における過程の重要性、近年の国や地方自治体の政策形成の動向などについて、県外自治体における事例を交えてご講演いただきました。
 現代の社会形成は行政だけが担うのではなく、多様な主体とともに公共的課題を解決する必要があり、この時代に求められる行政職員の能力として政策形成能力だけではなく政策変更能力も養成していく必要があることや、トップダウンに対するボトムアップの優位性、ボトムアップの効率化を図るには現場職員の気づきや創意工夫が必須であることなどをご説明いただきました。

セミナー 講演会 シンポジウム

 2025年6月11日(水)、三重地方自治労働文化センターにおいて、「2025年度三重県地方自治研究センター定期総会」を開催しました。

 

 議事内容として、事務局より報告提案が行われ、2024年度事業報告・会計決算報告・会計監査報告が確認されました。続いて、第1号議案2025年度活動方針(案)、第2号議案2025年度予算(案)が提案され確認されました。また、第3号議案役員の一部改選(案)が提案され承認されました。

総会の様子

 定期総会終了後には定期総会記念講演会を開催しました。講師にお迎えした 立命館大学 産業社会学部教授 筒井 淳也 様から、「少子化の現状と地方自治体が取り組むべき対策について」と題したご講演をいただきました。

立命館大学 産業社会学部教授 筒井 淳也 氏

【講師プロフィール】
 家族社会学、計量社会学、女性労働研究を専門分野とする筒井 淳也様は一橋大学社会学部を卒業後、同大学院社会学研究科博士課程後期課程を満期退学、社会学の博士号を取得、2014年より現在の立命館大学 産業社会学部教授としてご活躍されておられます。
 著書は『仕事と家族』、『結婚と家族のこれから』、『社会学入門』、『Work and Family in Japanese Society』、『社会を知るためには』、『数字のセンスをみがく』、『未婚と少子化』などが挙げられます。
 また、内閣府第四次少子化社会対策大綱検討委員会・委員、京都市男女共同参画審議会・委員長の他にも法務省の家族法制に関する世論調査についての検討会議や草津市や八尾市での男女共同参画審議会にて会長や委員を務められるなど、国や地方自治体などの行政機関の政策立案や施行に関し、数多くご参画をいただいております。

【講演要旨】
 世界的な傾向、近年の未婚化・晩婚化の影響、所得による結婚率の違いなどを一因とした過去からの持続的な出生率の低下は、現時点で仮に出生率が一時的に上昇したとしても出生数としては増加しない状態に陥り、人口減少に歯止めを掛けることができないところまで来ている。従って地域においては人口減少を想定した対策を練らざるを得ない。少子化に関する課題解決には人口の移動、特に女性について注視する必要があるが、地域においては進学・就学の機会が少ないことや男性とのライフスタイル(価値観、過去からの慣習)の相違などを要因として移動する傾向が高い。
 これらを考慮に入れると、行政としては少子化対策として真っ先に挙げられる子育て世帯への支援策だけではなく、バランスの取れた政策を模索する必要がある。

 なお、総会及び記念講演会の詳細内容については、6月27日発行の第396号及び7月25日発行の第397号の機関紙「地方自治みえ」に掲載します。

講演の様子
講演の様子