2021年2月17日(水)に、「文化政策における参加・協働の在り方に関する研究会」の事例調査研究の一環として、青森県八戸市へのオンライン上でのヒアリング視察を実施しました。八戸市は、文化芸術によるまちづくりの方針のもと、これまで様々な取組を進められています。今回、その取組の中心にいらっしゃる八戸市まちづくり文化スポーツ部の皆様に、取組の内容や今後の展望等についてお話いただきました。
まちづくり文化推進室 文化推進グループリーダーの榊原 由季 様からは、八戸市の文化政策と取組として、市民の文化活動が幅広い分野へ展開していることから、当初は教育委員会の所管であった文化振興を担う部署を市長部局へ所管換えしたこと、文化芸術推進のために専門職員を採用していること、市民の多種多様で特色ある文化を「多文化」と定義して、「多文化都市八戸の推進」を掲げて取組を行っていること、市中心街に「八戸ポータルミュージアムはっち」「八戸ブックセンター」「八戸まちなか広場マチニワ」等の様々な文化施設を整備し、更に新たに美術館を開館する予定であること等、アートのまちづくりを一層充実させていくためのこれまでとこれからの様々な方針や施策をご説明いただきました。
八戸ブックセンター 所長の音喜多 信嗣 様からは、八戸ブックセンターの取組についてご説明いただきました。本を活用したまちづくりという観点で「本のまち八戸」の拠点施設として整備された施設で、本を販売している公共施設としては全国で唯一であるそうです。探しやすい棚づくりではなく本との偶然の出会いを作りたいという方針のもと、様々なテーマを持った棚を設定して一般的な分類にとらわれない陳列方法や、読書の面白さを感じてもらうために環境に工夫を凝らした「読書席」、執筆をしたい人のための専用作業スペース「カンヅメブース」等の斬新な発想の施設機能等をご紹介いただきました。
八戸ポータルミュージアム「はっち」館長の北村 政則 様からは、八戸ポータルミュージアムの取組についてご説明いただきました。当初は山車会館を中心とした地域観光交流施設として検討されていましたが、現在の市長就任後に大きく方針転換し、中心市街地の中核施設として、市民交流、観光PR、各種イベント開催に対応できる複合的な文化施設として構想が進められ、現在の「はっち」の建設に至ったそうです。新たな交流と創造の拠点として積極的に事業を企画・実施しており、地元の祭の八戸三社大祭で使われる山車の造形力という地域資源に光を当てるアートプロジェクト「はっちプロジェクトDASHIJIN」等の様々な取組をご紹介いただきました。
新美術館建設推進室 学芸員の大澤 苑美 様からは、これまでにご自身が手掛けられてきたアートプロジェクトの事例として、「南郷アートプロジェクト」「八戸工場大学」の取組についてご説明いただきました。「南郷アートプロジェクト」は、合併して八戸市となった南郷という地区を舞台にしたアートプロジェクトで、合併に関わる行政課題と向き合いながら、外部アーティストと地元の伝統芸能とのコラボレーション舞台や地域の歴史に関わる昔話をもとにした演劇づくり等、自然・歴史等の地域資源と伝統芸能・ジャズ・ダンス・演劇等を組み合わせて様々なプログラムを実施してきたそうです。「八戸工場大学」は、工業都市である八戸市民には見慣れた光景である工場群を地域文化資源として捉えて、景観・文化・まちづくり・観光・産業等の多角的な視点とアートを組み合わせることで、その魅力や価値を再発見して発信しようとするプロジェクトで、市民と行政で一緒に運営して、工場について市民と一緒に学ぶ講座や、工場と連携したアートプロジェクトの実施といった活動をされているとのことでした。
文化芸術によるまちづくりという明確な方針のもとで行われている様々な先進的な取組に圧倒されましたが、その根底には担当職員の皆さんそれぞれの文化芸術、地域、まちづくりに対しての強い思いがあり、自らが飛び込んでいき、対話を重ね、協力・連携を構築する中で企画を実現させているのだと感じました。文化政策の方向性を考える上で示唆に富む内容であり、貴重な勉強の機会となりました。
青森県八戸市へのオンラインヒアリング視察を実施しました
香川県丸亀市へのオンラインヒアリング視察を実施しました
2021年2月4日(木)に、「文化政策における参加・協働の在り方に関する研究会」の事例研究の一環として、香川県丸亀市へのオンライン上でのヒアリング視察を実施しました。
現在、丸亀市は、地域の様々なセクターの人々との対話や協働を通じて、施設の必要性や文化政策の在り方を模索しながら新しい市民会館「(仮称)みんなの劇場」の整備事業を進められています。今回、その取組の中心にいらっしゃる丸亀市産業文化部文化課 市民会館建設準備室長の村尾 剛志 様に、取組の内容やその背景にある考え、今後の展望等についてお話いただきました。
村尾様は、これまで携わった業務経験の中で、これまでの当たり前をもっと疑ってみる必要があるという考えに至り、新しい市民会館建設プロジェクトにおいても、文化施設を市民の半分が使用していない状況で、「公共の文化施設」整備における全ての市民に共通する大義を考えた結果、市民共通のテーマである「くらし」に着目して、文化芸術関係者だけではなく、くらしの課題解決に取り組む人々との対話により、「要望」ではなく「必要性」を探っていくことにしたそうです。市民活動団体・NPO、福祉施設、病院等へ行政から出向いていく市民座談会を実施し、これまでに更生施設や、児童養護施設、就労支援施設、フリースクール等を含めた施設へ訪問して対話を行う中で、自分たちの町にも繋がりや関係性の希薄さがあること、社会的孤立は誰にでも起こりうることを実感し、心を開く要素は「楽しい」ことであり、その要素を持っている文化芸術を、様々な理由で市民会館と距離が遠くなっている人々に届けていこうとする姿勢が必要であり、みんなの痛みに向き合うことを新しい市民会館のこれからの当たり前にしていきたいという思いから、「(仮称)みんなの劇場整備基本構想」では、職員自分たちの言葉で「豊かな人間性を育む」「誰一人孤立させない」「切れ目ない支え合い」という3つの基本理念を掲げることにしたとのことでした。
また、市民会館整備と併行して進められている取組として、社会的価値に着目して文化芸術で社会的課題を解決するということをわかりやすく理解してもらうために、実際の課題に対してどう解決していくかを具体的に見せていくという「課題解決型実践事業」や、文化芸術活動支援の担い手養成を目的の一つとした「文化芸術推進サポーター養成講座」等、様々なアプローチの取組をご紹介いただきました。
文化政策の在り方だけでなく、行政職員としての仕事への向き合い方を改めて考える上でも深い学びとなる大変貴重な機会となりました。
連続セミナー「地方自治の学び場-地方分権の視点から地方財政の確立を志す-」第2回を開催しました
地方分権の視点から地方財政に関する能力を高め、地方財政の健全化と地方分権の達成に資することを目的として、自治労三重県本部との共催で行う本セミナーですが、2021年1月25日(月)に開催した第2回目は、公益財団法人地方自治総合研究所 研究員 飛田 博史 氏をお迎えして、「地方財政の仕組みと現状」という内容のご講義をいただきました。当日は、今般の新型コロナウイルス感染症の全国的な感染拡大状況を考慮し、第1回目と同様にオンライン上でご講義いただく方式で開催致しました。
飛田氏からは、地方財政の仕組みとして、国と地方の財政の関係や歳入及び歳出の特徴を、地方財政の現状として、これまでの歳入と歳出の推移や債務残高・積立金の状況を、財政の健全性の見方として、決算カードや主要な財政指標についてご説明いただきました。また、主要財政指標に関わり、県内市町の状況について実際の数値を見ながら具体的にご解説いただきました。今後、特に新型コロナウイルス感染症の影響により財政悪化を理由とする合理化の動きが強くなる可能性について触れ、これまで以上に職員一人一人自らが自治体財政を見極める力を養っていくことが必要であるとご提言いただきました。
なお、飛田氏には、これ以降行われる当セミナーの第3回と第4回にもご講義いただく予定です。