文化政策

 2021年2月4日(木)に、「文化政策における参加・協働の在り方に関する研究会」の事例研究の一環として、香川県丸亀市へのオンライン上でのヒアリング視察を実施しました。
 現在、丸亀市は、地域の様々なセクターの人々との対話や協働を通じて、施設の必要性や文化政策の在り方を模索しながら新しい市民会館「(仮称)みんなの劇場」の整備事業を進められています。今回、その取組の中心にいらっしゃる丸亀市産業文化部文化課 市民会館建設準備室長の村尾 剛志 様に、取組の内容やその背景にある考え、今後の展望等についてお話いただきました。

 村尾様は、これまで携わった業務経験の中で、これまでの当たり前をもっと疑ってみる必要があるという考えに至り、新しい市民会館建設プロジェクトにおいても、文化施設を市民の半分が使用していない状況で、「公共の文化施設」整備における全ての市民に共通する大義を考えた結果、市民共通のテーマである「くらし」に着目して、文化芸術関係者だけではなく、くらしの課題解決に取り組む人々との対話により、「要望」ではなく「必要性」を探っていくことにしたそうです。市民活動団体・NPO、福祉施設、病院等へ行政から出向いていく市民座談会を実施し、これまでに更生施設や、児童養護施設、就労支援施設、フリースクール等を含めた施設へ訪問して対話を行う中で、自分たちの町にも繋がりや関係性の希薄さがあること、社会的孤立は誰にでも起こりうることを実感し、心を開く要素は「楽しい」ことであり、その要素を持っている文化芸術を、様々な理由で市民会館と距離が遠くなっている人々に届けていこうとする姿勢が必要であり、みんなの痛みに向き合うことを新しい市民会館のこれからの当たり前にしていきたいという思いから、「(仮称)みんなの劇場整備基本構想」では、職員自分たちの言葉で「豊かな人間性を育む」「誰一人孤立させない」「切れ目ない支え合い」という3つの基本理念を掲げることにしたとのことでした。

 また、市民会館整備と併行して進められている取組として、社会的価値に着目して文化芸術で社会的課題を解決するということをわかりやすく理解してもらうために、実際の課題に対してどう解決していくかを具体的に見せていくという「課題解決型実践事業」や、文化芸術活動支援の担い手養成を目的の一つとした「文化芸術推進サポーター養成講座」等、様々なアプローチの取組をご紹介いただきました。

 文化政策の在り方だけでなく、行政職員としての仕事への向き合い方を改めて考える上でも深い学びとなる大変貴重な機会となりました。