地域共生社会,各種報告書

 地域共生社会とは、制度・分野ごとの『縦割り』や「支え手」「受け手」という関係をこえて、地域住民や地域の多様な主体が『我が事』として参画し、人と人、人と資源が世代や分野を超えて『丸ごと』つながることで、住民一人ひとりの暮らしと生きがい、地域をともに創っていく社会のことです。この地域共生社会の実現を目指して、令和3年4月に改正社会福祉法が施行されます。今後、地方自治体には、包括的な支援体制整備や分野を越える連携施策の実行などが求められることになります。
 2020年度、当センターは、地方自治体の地域共生社会政策について三重県社会福祉協議会と共同で研究を進めて参りました。本研究では、自治体職員における福祉教育の視点からアプローチを行いました。
 このたび、これまで活動を取りまとめ、内容について報告書として発行致しました。会員の皆さまには近日発送予定です。

地域共生社会政策研究報告書~地方自治体における福祉教育の課題と実践~

目次
第1章 地域共生社会と政策
 第1節 地域共生社会とは
  第1項 地域共生社会政策の経緯
  第2項 「地域共生社会」の実現に向けて(当面の改革工程)
  第3項 地域共生社会推進検討会最終とりまとめ
 第2節 地域共生社会と社会福祉法
  第1項 社会福祉法の目的
  第2項 平成30年4月施行・改正社会福祉法
  第3項 地域共生社会への懸念とその自治体政策の在り方
 第3節 重層的支援体制整備事業と地方自治体政策
  第1項 令和3年4月施行・改正社会福祉法
  第2項 縦割りの克服を見据えたアプローチとは

第2章 地域共生社会と福祉教育
 第1節 福祉教育についてのアンケート
  第1項 アンケート実地の経緯
  第2項 アンケート内容とその集計結果
  第3項 アンケートの気づき・考察
 第2節 福祉教育推進方法の研究経過
  第1項 セミナー「地域共生社会における連携を考える」の実施
  第2項 専門職連携と対話的教育
  第3項 職員自身の手作りによる研修
 第3節 クイズを利用した福祉研修の作成と実施
  第1項 福祉クイズ研修モデルの考案
  第2項 福祉クイズ作成
  第3項 福祉クイズ研修の実施
  第4項 まとめ


研究報告書によせて
おわりに


 

地域共生社会

 本年度は、地域共生社会の実現に向けた政策をテーマに三重県社会福協議会と共同で研究を進めております。地域共生社会の分野は、福祉政策から保健、医療、まちづくりや教育といった多岐にわたるため、中心となるテーマとして「福祉教育」という視点でアプローチを行っております。
 研究の具体的実践として、福祉研修ツール作成を県内の7市町(桑名市、鈴鹿市、亀山市、伊賀市、伊勢市、鳥羽市、御浜町)の協力で行いました。研修ツールとして、福祉クイズ集を作り、対話的な研修に役立てる方法を考え、このたび、福祉研修ツール検証会を三重地方自治労働文化センター大会議室で実施しました。
  検証会では、 研究で作成した福祉クイズ研修を行った後、研修の効果を計るためにアンケートを実施しました。研修の方向性・内容については、参加者からの評価は高く、また課題についても有意義なご意見をいただきました。


セミナー 講演会 シンポジウム,地域共生社会

 2020年9月30日(水)三重地方自治労働文化センター4階 大会議室において、セミナー「地域共生社会における連携を考える」を開催しました。

 はじめに、三重大学大学院医学系研究科生命医科学専攻臨床医学系講座家庭医療学分野助教 後藤 道子 氏に「地域包括ケアの充実に向けて~ヒューマンケアに必要な専門職連携や組織間連携とその考え方~」と題した、ご講演をいただきました。
 三重大学総合診療ネットワークでは、地域住民が健康的な生活を続けられるように総合診療の推進や医療従事者の育成を行われています。ご講演では、地域総合医療に関わる状況やその背景、総合医療医の果たす役割、地域における全国や三重の事例についてお話いただきました。また、地域包括ケアの基礎的な理論についてご解説いただき、現在の地域福祉の分野で中心的な概念・制度の一つである地域包括ケアについて、参加者は新たな視点で考えることができました。また、保健・福祉・医療についての分野で近年世界的に推進されている専門職連携について、教育、特に対話的な教育の重要性を学ぶことができました。
 次に、名張市「地域共生社会の実現に向けて」の映像を閲覧し、住民主体の生活支援や福祉に関わる総合的な相談窓口の取組みなどの事例から、名張市における地域共生社会政策について学びました。
 最後に、三重県内29市町に対して実施した福祉教育についてのアンケートを参加者と見ながら地域共生社会に向けた課題を共有致しました。
 講演を通じ、制度・分野の枠や従来の関係を越えて、施策や取組みを実行するということの難しさを考えたと同時に、地域において、様々な立場でご尽力されている方の力で地域が支えられていることを改めて感じました。