地方分権

 2022年1月18日に愛知県大府市、1月24日に愛媛県砥部町へオンラインヒアリング視察を実施しました。ヒアリング視察では、地方分権改革における提案募集方式への取組についてお話を伺いました。
 提案募集方式とは、地方自治体から国に対して事務権限の委譲や地方に対する規制緩和についての提案を行う制度です。大府市と砥部町は、全国の自治体の中でも提案募集方式を継続的に活用している実績がある自治体であることから、今回、取組内容等についてお話をいただきました。

 大府市では、職員の基本姿勢として、独自性、先駆性、付加価値性の視点を持ち、前例にとらわれない発想による政策立案や日々の業務改善に取組んでいるとのことで、市の新事業を推進する際に国の制度が支障になったという経験をきっかけに、市長のリーダーシップにより市民に身近な基礎自治体である市ができることを実施していくための手段の一つとして提案募集方式を活用しているとお話いただきました。
 取組内容としては、まず内閣府職員が講師を務める研修を実施することで制度周知を行い、その後、全庁的に積極的な事前相談を行い最初の提案に繋げていったとのことです。また、提案募集方式を取りまとめている企画広報課では、毎年度5つ以上事前相談を行うことを目標に設定し、各課への案件照会やとりまとめ、職員からの提案募集方式に関する簡単な相談を受け付けること等実施し、担当職員も実際に提案募集方式に取組むことで制度の理解を深める取組みも行っているとのことです。また、提案の成功体験を職員間で共有し、提案に対する気持ちのハードルを下げることや提案の意識の浸透を目的として、取組成功体験を発表する場も設けていること等お話いただきました。

 砥部町では、少しでも業務を効率化し職員の負担を軽くしたいとの思いで提案募集方式に取組まれています。提案募集方式に取組むことになったきっかけとしては、愛媛県が主催した内閣府職員が講師を務める研修に参加したことを挙げており、研修では、提案内容を検討するグループワークを行ったとのことです。研修後は実際に内閣府へ事前相談を行い、結果として事前相談した提案の中から2件本提案を行うことができたとお話いただきました。
 取組としては、2年に1回のペースで同様の研修を行うこととしており、研修を実施することで職員への制度周知が進み、また研修のグループワークにより提案のタネを発見することに繋がるとのことです。また、研修前に事前課題として、普段の業務で感じる「不便」や「こうなったら仕事がもっと楽になるのに」と感じることを書きだしてもらうことで研修当日のグループワークがより効果的になるとお話いただきました。
 提案を活用していくためのアドバイスとしては、提案の内容は日頃のちょっとした「不便」や「不満」の中から見つかることが多いため、「不便」「不満」を提案に繋げるためにとりあえず現状にどのような課題があるかを考えてみることが大切であるということる等お話をいただきました。
 
 今回ヒアリングを実施して、両自治体共に内閣府職員が講師を務める研修を受講したことが提案募集方式に取組むことになったきっかけや取組事項に挙げられていたので、その研修を受講することが提案募集方式に取組む上で重要であるように感じました。また、両自治体共に内閣府職員へ事前相談することは思っているほどハードルが高くなく、提案内容の完成度が高くなくとも事前相談をすることで内閣府職員が一緒に考えてくれて完成度が高まっていくので、積極的に事前相談を行うことが大切であるとお話いただいたことが印象的でした。国の職員とやり取りする上で、提案内容がきっちり整った上で話をしなければいけないと思ってしまいますが、提案の内容が荒い状態でも一緒になって考えてくれるという内閣府職員の姿勢を提案経験者の声として聴くことができたことが、事前相談を行うことのハードルをより一層低くしてくれたように感じました。今回のオンラインヒアリング視察で得られた知見等を活かして、これからの研究活動に繋げていきたいと思います。
 ご協力をいただきました大府市、砥部町の職員の皆様、お忙しいところご対応をいただき誠にありがとうございました。
 また、今回の視察テーマである提案募集方式についてより詳しく学ばれたい方は、内閣府ホームページのリンクを掲載しましたので下記の「内閣府HPへのリンク 地方分権改革-内閣府」をクリックしてご覧ください。
内閣府HPへのリンク 地方分権改革 – 内閣府

オンラインヒアリング視察の様子
提案募集方式の概要(内閣府作成動画「あなたの声で日本の法律・制度が変わる!~地域の課題を提案募集方式で解決してみよう~(令和3年4月公開)」内で使用するスライド11ページ目より引用gakushu_slide_2.pdf (cao.go.jp))

地方分権

  三重県地方自治研究センターでは、この度「地方分権改革の在り方研究会-コロナ禍を契機として考える-」を設置しました。
 本研究会では、四日市大学 副学長 総合政策学部 教授 小林慶太郎様を座長に迎え、研究会メンバー(四日市市、鈴鹿市、津市、名張市、明和町、多気町)と、地方自治体職員の地方分改革の理解を深めることを目的に研究を進めていきます。
 第1回研究会(7月16日開催)では、地方分権改革が始まった経緯や理念、内容等を共有し、その後各市町と自治体の現状等について議論を行いました。
 今後は、今回の議論等を踏まえて引き続き研究活動に取り組んでいきたいと思います。