南勢志摩会場の概要 2

日時 平成13年12月22日(土)午後1時30分〜4時30分
於 阿児町阿児アリーナ


第2部 パネルディスカッション
《コーディネーターより情報提供──岩崎 恭典氏》
○ 県内で9回目、最後のシンポジウムが阿児町であることは、いろいろな意味が含まれているように思う。伊賀、尾鷲、熊野から始まり3か月経っていないが、様々な地域で市町村合併の議論が沸き起こり、この会場にも多くの方々がお集まりになった。

《パネリスト意見──中島 勉氏》
○ 志摩郡の合併については以前から期待されており、国と地方の財政の危機的状況からみても市町村合併は必要と考えている。地方分権が始まり、市町村合併についても語る時代から実践の時代へと移り変わった中で、「あすの志摩を考える会」を住民活動として立ち上げた。少子高齢化への対応や英虞湾などの環境問題、地域の情報化など具体的な項目について検討し、多くの人々に指示されて活動を進めてきたが、いざ合併協議会を立ち上げる段になると、3町賛成2町反対ということで設立できなかった。署名活動も行っていたのだが、議会において十分な議論が為されないままに否決されてしまった。
○ 議会により否決された4年後の昨年12月には合併パターンが打ち出され、行政主導で急速に市町村合併の話が進み、志摩5町で勉強会を発足したが、4回で打ち切られた。その後、4町での研究会が発足し、住民も期待と関心を示した。それらの過程を経て、今年11月26日、阿児、志摩、浜島の3町で合併の地域指定を受けることになった。
○ 志摩5町の合併についての話し合いは暗礁に乗り上げたが、この地域は元来、地理、歴史、文化、生活において結びつきが強く、買い物などは既にボーダーレスである。27万都市としての鳥羽1市7町の合併についても大切な検討課題であるが、合併特例法は時限立法であるため、大規模合併を性急に考えるのは無理である。現在は志摩5町で合併の議論を進めていくことが望ましい。
○ 地域の特色を出し、自立への対応策を地域で考えることが重要であり、志摩5町が足並みを揃え議論を尽くし、一緒になっていくことを期待している。あらゆる視点から志摩の未来を協議し、住民の納得のいく結果を出していくことが大切である。

《パネリスト意見──中村 元氏》
○ 合併は住民自治を守るために行うべきであるが、合併問題について議論する場はほとんど無い状況である。樹神先生の話に賛同する部分も多い。地方自治体とは住民一人一人に近い行政体であるということを考える必要がある。
○ 民主主義の最も大きな基本は「責任」であり、「補完性」の原則に戻るならば、個人でできることは個人で、個人でできないことは近所で、近所でできないことはコミュニティで、さらにコミュニティでできないことをすべき単位について考えると、現在の市町村で良いのかという問題が合併問題である。
○ NPOは既に広域活動を行っており、そこにも補完性の原則が働いているのであるが、市町村の区分けがネックになっている。伊勢・志摩・鳥羽PR会議では民間4社が広域的に観光をPRしようとしているが、今の市町村の枠組みがネックになり、それぞれの観光協会から「よその市町村のことまでやってあげて」といったクレームが来る。感覚的に広い行政単位の必要性を感じており、その中でも全てお上に頼っていてはダメだと感じている。

《意見交換──パネリスト・コーディネーターから講師への質問等》
(岩崎)補完性の原則について補足説明をお願いしたい。
(樹神)補完性の原則とはヨーロッパの考え方であり、素直に言えば中村氏が言われたようなことである。個人は尊厳を持って社会にあり、個人でできないことをコミュニティでする。それらの段階を経て国があり、その上にヨーロッパではEUがある。フランス、スペイン、イタリアではコミュニティは1,000〜2,000人と小さく、だから規模を変えろという問題ではなく、コミュニティが全権限性を持ち、できないことについては国または県がする。制度や規模のあり方は国によって様々である。

《意見交換──会場からの意見・質問への対応等》
Q.合併して規模が大きくなれば福祉はどうなるのか?
(樹神)難しい問題である。介護保険については市町村で行うより県や国単位で行うべきだと考えている。保険制度を財政的に支えるためにはある程度の規模が必要である。一方、対人福祉サービスについては市町村で行うことが望ましい。これら2つの福祉の組み合わせ方が問題である。スウェーデンでもこれらの観点から合併を進めてきている。合併後に福祉はどうなるのかという問題は、合併協議会の中での、何の分野にどれだけの費用を費やすかという計画次第である。市町村合併が直接福祉に繋がるのではないため、協議会の中で一定規模を確保して議論することが大切である。
Q.財政にとって、市長や議員が減ることは良いのではないか?
(樹神)市長や議員が減れば、市町村の歳出は減る。ダブりが無くなるという効率性はある。ただし、それだけで良いのか。それだけのことならば、広域での議論で良いことである。
Q.町の活性化からみれば合併すべきではないか?
(樹神)確かにその通りである。人が住んでいる面積が広すぎるのは少し問題だと考えている。
(岩崎)志摩5町180km2で具体的にどのように狭域的な行政を含めるかが問題である。
Q.合併して地域の個性が失われるのでは?
(瀬戸)合併はそれぞれの地域の個性を壊すものではなく、むしろ合併することにより市の個性が活かされている。合併前はそれぞれの町のものであった「丹波立杭焼」という特産品や「デカンショまつり」などを、市として全国に情報発信しており、その取り組みによって地域を見つめ直すことができる。市の面積は確かに広いが、30分もあれば行き来することができるし、昔の町と町をつなぐ道づくりも可能である。統合された中学校にチルドレンズミュージアムを作り地域の活性化に役立てることもできる。古い市町村にこだわる必要はない、合併しなければどうにもならない、合併すべきという方向に発想を転換することが大切である。
Q.4町が合併したことで社会情勢が変わり、昔の市町村単位はどうなったのか?
(瀬戸)中核都市をつくるのは理想ではないが、住民からの要請・要望に応えるためにはある程度の行政規模が必要である。交通やITなどを組み合わせると不満は出ず、かえって利便性が高まることが多い。
Q.市職員の人事の配分問題はどうしているのか?
(瀬戸)合併した時点では、もとの町村の規模の大きさで割り振りせざるを得なかった。現在は出身に関係なく適材適所で人事を行っており、規模が大きくなった分、良き専門家としての職員の養成、資質の向上もできる。
Q.介護保険は合併によって効果があったのか?
(瀬戸)現実を踏まえて行っている。合併したことにより、施設の利用効率は上がっている。保険料も低い基準で調整できている。
Q.合併そのものが行政改革というのはおかしいのでは?ダブりを整理するだけなのでは?
(瀬戸)ダブりを整理することは大きなことである。10年間で100人の職員を減少できる。小さなコストで大きな効果を挙げるということでは、市町村合併は有効である。
Q.日本と外国の行政には違いがあり、それらの比較が活かされるのでは?(中島)
(樹神)日本は基礎自治体がありとあらゆる仕事をしているが、ヨーロッパでは自治体が小さくてできない状況がある。しかしスウェーデンを見るとそうとも言えない。また、日本がありとあらゆる仕事をしていることにも問題はある。今回の市町村合併の動きにより、様々な規模の自治体(政令市、中核市等)ができると思われるが、今後は規模に応じてどのような事務が市町村でできるか区別する必要がある。また、市町村の権限として何を大切にしなければいけないかを考える必要がある。財政的にどうするのか、県や国に何を補完させるかなどを考えなければならない。
Q.篠山市は市になってどう変わったか?(岩崎)
(瀬戸)市になって福祉事務所を持つことになり、お金が必要となったが、市民税の均等割りが500円高くなっただけでそれほど変わらない。サービスの水準は高くなっている感がある。市になる際に旧町名は大字として残せたし、市というイメージが企業や観光客へのイメージアップ、市民意識の向上にも繋がっている。集落の活性化については、「緑ゆたかな里づくり条例」により、地域を地域住民の手で描いていくお手伝いができている。小学校区のコミュニティについても合併したからといって薄れるわけではない。また、旧役場は全て支所として残して、現在は住民票の発行や福祉の窓口として使っており、今後どのように使っていくか検討中である。
Q.地方交付金が10年先まで保障されるということだが、そのような状況が続くとは思えない。(会場)
(瀬戸)財源については厳しい状況が出てくるのは当然である。今後来る危機のために財政を立て直していくつもりである。しかし、現在の状況で地域が交付金なしにやっていくことは不可能である。国が財源をさらに下ろしていくことも不可能である。何らかの処置が為されるであろう。
(樹神)事務配分とそれに掛かる経費負担が分離しているため、事務のみをやらせてお金を減らすことがあるが、その部分については見直す必要がある。財源を切り離して地方分権というのは間違っている。財政調整は必ず必要である。合併を考えるのも一つの方法であり、多くのことを同時に考えていく必要がある。全くの仮定として、志摩4町では自立することはできない。合併がすぐに自立を意味するのではない。



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