南勢志摩会場の概要 1
日時 平成13年12月22日(土)午後1時30分〜4時30分
於 阿児町阿児アリーナ
第1部 基調講演「市町村合併を考える」
《講演のポイント──瀬戸 亀男氏》
○ 最初は19の町村であったが、昭和30年に6つに、昭和54年に4つに合併し、最終的に平成11年に篠山市となり1つになった。昭和30年から多紀郡4町は1つになるべきだということで5回に渡り検討会議を開いたが、市の名前や庁舎の位置などの問題などもありうまくいかなかった。平成4年の8月に、4町内にあった多くの問題を1つの市になって解決すべきということで、6回目の合併協議会を立ち上げることが議会で持ち上がり、平成8年に合併研究会を、平成9年に法に基づく合併協議会を立ち上げ、協議会だけで44項目、それ以外を含めると500項目に上る問題を調整し、2年の歳月を経て合併に至った。
○ 合併前、多紀郡4町にはごみ処理場と斎場の改築の問題、水の供給の問題、鉄道の複線化の問題、国立病院の委譲の問題など多くの問題があった。それらを広域行政で解決できない訳ではなかったが、広域行政の中の1つの町でも反対すれば事業展開ができないこと、意見の統一が難しいことなどから、広域行政では問題解決に不十分であり、1つの市になって解決しようということになった。また、国の財政状況は厳しいため、市町村自らが地域の問題を解決していくことが必要であるとともに、国の権限が市町村に下りてくる際の受け皿を作る必要もあった。
○ 合併にあたり、新しい市の名前と旧町名の問題、新庁舎の位置の問題、国保税の問題、公民館や通学バス負担金の問題、職員の給与の問題など多くの問題があり、調整が必要であった。合併には政治的判断が必要であるため、協議は全て非公開で進めたが、この点には多くの批判もあり、原則は公開、必要な場合のみ非公開とした方が良かった。また、合併には首長と議会の決断が重要である。
○ 合併時にサービスを高い水準に合わせたため、その分の経費が3億多く必要となった。地方交付税の算定替え特例を5年間から10年間に延長するように要請し、実現した。また、特例債の枠を増やしてもらった。特例債は合併時の多くの課題を解決するために効率的な形で事業展開し、市民の幸せにつなげる形で活用した。国による財政支援も合併が成功した大きな要因であった。
○ 合併したことによって、特例債を活用しながら多くの問題を解決することができた。介護保険についても1つの市になっていたことでうまく導入できた。財政力が強化されたことにより、市の周辺部についても活性化が可能となった。また、参画と協働を推進するため、公募の委員をあらゆる場で用いるとともに、小学校区ごとのコミュニティをしっかりと構築し、そこに生涯学習、コミュニティ活動を位置づけた。市職員の資質の向上のために、目標管理制度も取り入れた。
○ これからは地方の時代、市町村の時代であり、常に変化に敏感であることが大切である。「チーズはどこに消えた」ではないが、消える要因はなんだったのかということをきちんと把握しながら政策決定、政治を行っていく必要がある。
《講演のポイント──樹神 成氏》
○ 篠山市は例外的に市町村合併が成功した事例である。この辺りの地域では4町で合併する方向ということだが、合併の規模について、範囲はどのように定めるのか、何のために合併するのかをしっかりと考える必要がある。それらが篠山市では明確であった。単に財政振興、地域振興、市町村の自立のためだけに合併するというのでは失敗する。
○ 地方自治とは何かを考えるときに、一番具体的な手掛かりは、地方自治法に直接請求制度が入っていることである。3分の1の署名で議員を辞めさせることができるなどの、住民の意思が政治に反映されることが地方自治の出発点であり、このことを欠いて市町村合併を進めてはならない
○ 国や県が進める市町村合併の理念は「規模の拡大」を前提とした「自立」のみを強調しているが、今の時代、市町村が自立することはできない。財政力の無さを感じながら合併すること、また、財政力に応じてできる事業が違ってくるというのは地方自治の本来の姿ではない。間違っている。現在、ヨーロッパの先進国の中では、イギリスのみが市町村合併を進めているが、コミュニティに一定の権限を与える徹底したコミュニティ政策を進めている。そのような経験抜きに、いきなり市町村が1つにまとまることはできない。一方、スウェーデンでは1970年代に社会福祉を充実させる目的で市町村合併が行われた。市町村の規模は人口3万人台と日本と同程度だが、市の役割は対人福祉サービスに徹底している。
○ 財政力に応じて地方自治の中身が決まるというのでは地方自治の発展には繋がらない。日本は明治以来、規模志向型の合併を進めてきたが、それでは中核となる都市的な市町村が周辺市町村をのみ込む形になってしまう。自立、連帯、再配分が三位一体の中での合併を考えるべきであり、規模を拡大することで地方自治を自立させるというのはおかしい。フランス、スペイン、イタリアなどのヨーロッパのラテン系の国々では、基礎自治体は小さいが自立している。
○ 広域化すればするほど住民の意思が反映しにくくなる。小さな地域でなければ住民の意思を測ることはできず、住民の意思を反映していなければ、無駄な事業が多くなる。いろいろな権限を地域に下ろしつつ自治体を大きくするように、住民の意思を聞き、反映させていく工夫が必要である。
○ 行財政規模を大きくすることのメリットとして、人材が得られるということが言われているが、本当にそうであろうか。小さい単位の自治体であれば、住民と向き合って話せる、直接対話できる機会が多く、そのことを行政に活かすことができる。
○ 市町村合併の背景として財政問題があるが、合併したからといって財政力が豊かになることはあり得ず、幻想を持つべきではない。10年過ぎるとどうなるか分からないのである。合併する前にどういう規模で、どういう形で合併するのかなど、目標を明確にしておかないと大変なことになる。地域が市町村合併に合うのであれば合併は進めるべきであるが、区域を大きくすれば単に効率よくなるという合併はやめるべきである。
○ 合併については、最終的な決定は住民投票というのが理想的という考え方があるが、賛成・反対に関わらず、将来の地域を考えていくべきである。
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