桑員会場の概要 2
日時 平成13年11月17日(土)午後1時30分〜4時30分
於 北勢町町民会館
第2部 パネルディスカッション
《コーディネーターより情報提供──竹下 譲氏》
○ 一般論を述べて整理したい。1つ目は、666兆円の借金による財政難である。これらは1,400兆といわれる国民の預貯金からのものである。会場からの質問のなかに、自分のまちは財政が潤っているのにどうして市町村合併しなければならないのか、というものがあるが、現在、健全財政であるのは、国からお金をもらっているからで、ほとんどのまちは厳しいだろう。
○ 2つ目は、時代の変遷、中央集権体制の行き詰まりということである。日本を発展させるのに大成功したシステムだが、100年経って行き詰まりを見せている。地方や民間が国に依存しすぎたことの現れである。日本は豊かになり、格差是正のために一丸となるというよりは、地域で独自性を発揮しなければならない。このため、地方で決めて地方で実施するということが必要になってきたという認識から、地方分権一括法が施行された。しかし、自分たちのことは自分たちでと言うが、実行できる人材はいるのかと言えば、小さな町村ではそれができるだけの余裕はない。また、議会も地域が何をすべきかをリードしていかなければならない。
○ 3つ目は、三重県は市町村を重視しており、意識的、積極的に市町村合併を進めているということがある。県を解体したとしても、市町村を重視することが三重県民にとっては幸せなことであると考えている。職員のレベルアップを図るためには、規模の拡大をしなければならない。
《パネリスト意見──高橋恵美子氏》
○ 大きな借金を、自分の子や孫に引き継がせるわけには行かないし、解決の1つの道として市町村合併を市民の立場で考えていかなければならないと思う。これまで行政と協働してきた。直接的に行政の方と話ができた。お金持ちのまちは桑名市と合併してくれないのではないかと、不安にも思う。
○ 広域になって一番心配に思うのは、介護保険にかかわっていると、高齢者はうまく発信できない人々であると感じることである。だから利用率も低い。在宅介護支援センターが掘り起こしを行っている。桑名市は老人相談員が1人あたり100人を受け持っている。広域になると、人数が減らされ、仕事の能率が下がってしまうのではないだろうか。
○ 協働ということでは、これからは、縦割り行政という感覚を捨てて、総合職であって、かつ専門職という力を付けていかなければならない。合併して広域になった場合に、こんなことができるというパターンを市民に示して欲しい。
《パネリスト意見──寺西加代子氏》
○ 生活安全防犯協会、交通安全協会のボランティアとしての役割から見れば、交通・メディアが発達して、地元で何もかも済ませるということがなくなってきている。それに伴い、交通事故や犯罪も増えていることから、合併はおおいに賛成である。理由としては、効率化、スリム化を挙げたい。
○ 合併して都市になるからというのではなく、郡部でも犯罪は増えている。合併によって人員が増やされ、専門職を置いて、いろんな対策を行うことを希望したい。
○ 合併のメリットの一番大きいものは経済性であろう。では、誰にも分かるデメリットはどんなものがあるのか、教えてもらいたい。
《意見交換──会場からの意見・質問への対応等》
Q.平成の大合併で、市町村数を1,000や500や300にするというが、その数字の根拠は?
( 昇 )1,000という数字は、日本の郡の数に相当する。これは与党が出している数字である。300は自由党が主張している、衆議院小選挙区に合わせるというものである。たまたま江戸時代の藩の数が300であり、細川元首相などは「廃県置藩」などと言っている。500ないし600というのは、青年会議所の提案している案である。
(竹下)300という発想の時には、都道府県を廃止して、日本を連邦国家にしようというのがもとで、その中で市町村もまとめた方が良いという議論であった。その時には、狭い区域の団体、コミュニティレベルというか、そういうものの必要性も意識していた。イギリスと同じように、希望するところにはどんどん権限を与えようということであった。青年会議所の案については、500くらいになれば、「地方主権」が持てるという発想であった。
Q.市町村合併といっても、どの程度の規模が最適なのか?
( 昇 )自然条件があり一概には言えないが、過疎の地域であまり大きくしても意味がないが、都市圏で言うと、10万人までは大幅にコストが下がることから、10万人クラスをめざすというのが望ましいのではないか。
Q.デメリットを明確にしたいが。
(樹神)大きく言って2つあると思う。1つは、草の根民主主義の問題。住民自治というのは議会も大事だが、直接民主主義を地方自治法はうたっている。合併によって規模が大きくなると、直接請求などを行使する機会を小さくすることになる。もう1つは、中心部と周辺部に格差を生じる場合が多いということである。
もう1つ付け加えると、勘違いしてはいけないのは、合併しても財政が豊かになるわけでも、職員の数が増えるわけでもないということである。行政改革のためにやるのだから当然である。ただ、規模のメリットを生かして重複した機能を削減できるということはある。
Q.地区議会は、国の地域審議会(今の市町村レベル)よりも狭いということか?
( 昇 )それは地域の選択による。現在の市町村レベルでも良いし、中学校区、小学校区単位でも良いと思う。
Q.貧しいまちは合併の相手として選ばれないのではないか。弱者切り捨てにならないか?
(寺西)そのまちの規模によりいろんな財政状況がある。財政を前提とした合併で好き嫌いが出ては、合併は進まない。合併でそのまちを救済するぐらいの感覚を持てる、大きな心構えが必要ではないか。
(高橋)むしろ、そういうところを引き上げることによって、もっと豊かになるということも言えると思うので、どういう工夫をすべきかは行政の投げかけ方だと思う。
(竹下)島ヶ原村は、明治、昭和の合併で取り残された村だと村長が言っておられた。しかし、お年寄り同士が助け合うなど、そこなりにいろんな工夫をして自立している。それでも、もう限界だということではあったが。
Q.市町村合併については、住民投票を重視しようということが国会で検討されているが。
( 昇 )住民の方が問題を良く理解し、勉強されたあとで投票されるのなら意味がある。また、市町村合併は国策ではなく、市町村独自で決めるべき問題であるから、なじみやすい問題である。
(樹神)その制度は作為的で、合併協議会を作るかどうかというところで住民投票が入っていて、合併をするかしないかというところには住民投票がないしくみになっている。住民投票を入れるとすれば、法定協議会を作って中立的な立場で情報提供し、住民投票を行うというのが望ましいのではないか。
(寺西)住民すべてが勉強している方であれば、きっちりした判断ができると思うが、そうでない限り住民投票で決定することには疑問を感じる。
(高橋)選出した議員さんが住民の意思を汲み上げられていないというのが一番の問題であって、そういう議員さんを選ばない努力をする必要がある。
(竹下)イギリスの議会では、議会というのは議論をする場である。これを聞いていると、住民にも問題が分かってくる。そこで、住民の声を聴き取って、議会で議論し、最終決定するというしくみである。住民投票でなくても、議会で十分議論し、情報提供するようになれば、それで住民の声を聞き取れる。
Q.合併に対し多額の補助金を出すということは、国の財政をますます膨張させるのではないか?
(竹下)これはまさにその通りである。一時金を出してでも合併が進めば、その後は倹約できるという発想に基づくものだろう。国の現時点での政策の欠陥をついた質問だと思う。これ以上の解説は不可能であろう。
Q.これまで受けてきた恩恵は、合併により無視または廃止されることにはならないか?
( 昇 )正直に言って、すべての人が救われるわけではない。中心と周辺の問題は、地域審議会を作ればカバーできるが、どうしても救えない人がいる。物事を変えるときには、得する人と、損する人が出て来るものだと思う。
Q.都市内分権へのアプローチが知りたい。
( 昇 )まず、今の市町村の単位で地区議会、あるいは地域審議会を作っていくことからだと思う。一番いい方法で代表を選べばいいだろう。そして、合併計画の中に、地域審議会、地区議会の決定を最大限尊重するということを、約束事として入れておく。地域審議会や地区議会の上に、大きな市議会ができる。補完性の原則で、地区で解決できることは地区の決定を尊重する。できない問題だけ市役所で解決するというルールを、合併計画の中に盛り込んでおくことが一番妥当な方法であろう。
(樹神)まず、今の10万規模の市であれば、すでにあってもおかしくない制度であるのに、合併対策としてだけ捉える点に問題が出てきはしないかと思う。2点目に、合併するという方法のほかに広域連合という制度があって、補完性の原則の上に広域連合を位置づけることもできるのではないか。もう1つ、ヨーロッパの場合、小さな市町村・基礎的なコミューンがあって、合併したとしても、かなり強力な狭域自治の制度を導入している。日本の場合、経済性、合理性で地域の単位が考えられているので、やるならば、かなり真剣に取り組んでいただきたいと思う。
Q.地区議会のボランティア議員は具体的にどのようなものか?
( 昇 )いろいろな考え方がある。公選で選んでもいいし、有識者を委嘱している制度もある。ただしボランティアである。地区で決められることはなるべく地区で決める。地区を越えることになれば、市で決めるというしくみでよいと思う。
(高橋)ボランティアとなったときにやってくれるかどうか。地域のために時間を割いて、力を出してくれる人がどれくらい集まる地域づくりができるかが問題である。
(寺西)ボランティアということになると、時間があればやりたいとか、いろんな気持ちを持っている方がいる。今の議員さんに問いかけてみて、ボランティアでいいよと言う方はいないと思う。
(竹下)地区議会については、総務省も研究しているようである。日本でも100年ほど前までは、地区の庄屋や名主と呼ばれる人が、いろんな活動をしていた。同じ発想がイギリスで、コミュニティ議会というのがあり、ボランティアで構成されているが、なり手が少ない。そういう場合には推薦して、議員になってもらう。自分たちでやりたいと言えば、権限を獲得できる。
総務省も、今のまちを一方で合併して大きな集団にし、一方で小さなものにする。そこで地区議会のようなものを設けて、画一的でないいろんな権限を与えるということを検討しているようである。
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