講師の主張・一口メモ
今川 晃 氏 (四日市大学総合政策学部教授)
<一口メモ>
市町村合併そのものに反対しているわけではなく、地方分権の基盤、地域振興の基盤のあり方から考えないと地域の衰退、過疎化などの住民生活上切実な課題解決へと向かわないと考える。ポイントを箇条書きにしておこう。
1、広域的対応のためには、市町村合併は有効な選択肢のひとつであること。
2、行政サービスを受け取る消費者としての住民を強調しすぎると市町村合併によって効率的な行政は遂行できたとしても、主体的に「まちづくり」を行う市民としての「住民」不在では地域の活性化は難しい。
3、上からの合併パターンでは、各地域の政策上の戦略との整合性が疑問な地域も生じる。
政策上の戦略がなければ、合併前後の新自治体形成に多くのしこりを残しかねないのではないか。
4、市町村合併そのもので課題解決ができると思わせるメリット論には意味がない。すべては、新自治体のさまざまな活性化が大前提であることを肝に銘じてほしい。
(参考文献) 今川晃「市町村合併推進要綱で何が問われているか」『自治総研』2001年4月号など。
一部抜けておりました。訂正しておわびします。(事務局)
早川 鉦二 氏 (愛知県立大学外国語学部教授)
<一口メモ>
1、今、推進されようとしている市町村合併は、地方分権の推進や少子・高齢化の進展などのためではなく、国の財政再建を目指したものにすぎない。
2、合併の結果、住民は他人まかせとなり、住民の声が自治体に届かなくなったり、無視されることによって、住民自治が大きく後退する。。
3、合併の結果、過疎に拍車がかかり、人が住まなくなって、国土の荒廃を招く。
近著 「市町村合併を考える」(早川鉦二 著、開文社出版、2001年7月)
昇 秀樹 氏 (名城大学都市情報学部教授)
<一口メモ>
1、経済的には合併したほうが効率的。
2、政治的には、草の根民主主義の観点から、基礎的自治体規模はあまり大きくなりすぎることは好ましくない。
1、2のトレード・オフをどう解決すべきか。私は「市町村合併と都市内分権(地区議会)」を組み合わせることで、この問題解決を図ることがベターと考える。
岩崎 恭典 氏 (四日市大学総合政策学部教授)
<一口メモ>
市町村合併は、今次地方分権の理念たる「地域住民の自己決定権の拡充」に関わる大きな問題である。
少子高齢社会に対応して、限りある資源を、必要なところに必要なだけ投入できる仕組みを整えることが地方分権の目的である。そのためには、市町村合併も一つの有力な手段である。しかし、それは、同時に、各種施策の正統性を住民に求める手続きを重視するものでなければならない。
合併後の狭域ニーズに対応できるか、狭域の政治的な意思表明の機会は確保されるか、安易な合併特例債目当てのモラルハザードは防ぐことができるか等、合併に至るまでの課題は多い。
合併は、住民参加のまちづくりの壮大な実験、しかも失敗の許されない実験なのである。
阪上 順夫 氏 (松阪大学政策学部教授)
<一口メモ>
市町村合併は長期的視点で
地方分権時代となり、地方の自立、自己決定、自己責任が求められるようになった。だが、国・地方の財政難と少子・高齢化の進行という大きな問題がのしかかっている。国でも小泉内閣の構造改革が進められようとしているy。地方も従来の路線で進んでは、袋小路に入り込んでしまう。行財政改革を進めるには、地域の規模をある程度拡大しなければならない。首長や議員は、目先の保身を考える短絡的な考えは捨てて、長期的な視野を持たなければならない。10年後には、日本人口が減少傾向に突入する。当然高齢化は進む。行政関係者も住民も、10年、20年後の地域を考え、合併問題に直面すべきである。
瀬戸 亀男 氏 (兵庫県篠山市長)
<一口メモ>
1、合併には、首長及び地方議会の決断が必須である。
2、地域の特性と個性を殺すような合併はしてはいけない。
3、国、県がことさら合併を推進していない時代であったが、広域課題、地方への権限委譲の中、合併が我々自身の選択であった。まさしく自主的な合併であり、上から決められた合併はすべきではない。
4、歴史的背景を踏まえた合併論議があり、またそのような手法をとった。各々の地域に配慮する必要がある。
5、問題は行政主導と言われる中で、いかに住民に理解を求めていくかというところにあった。しかし、その一方で合併を積極的に進める者が必要である。
6、広域的な課題を具体的に解決する手段として合併があった。
7、「21世紀は中山間地に中小都市を築き、人と自然が調和した田園文化都市、10年後の6万都市を目指す」という具体的なビジョンがあった。
渡辺 悌爾 氏 (三重大学人文学部教授)
<一口メモ>
全国的に、市町村合併の動きが今年度に入って活発になっている。三重県でも、伊賀地域に続いて員弁地域でも協議会設置に向けて具体的な動きが始まる見込みとなってきた。これ以外でも、任意の研究会を開始する事例が増えている。国・地方の財政危機や時限的な合併特例法をにらんだ動きではあるが、広域行政ニーズが高まり、少子高齢社会の到来を見込んだ危機感が背景になっている側面も見逃せない。シンポジウムを機会にして、自ら地域社会の未来戦略をともどもに考えたい。
東 廉氏 (三重大学人文学部教授)
<一口メモ>
今回の市町村合併は、地方財政の危機を背景として推進されている。市町村合併について考えるには、以下のような危機の現実を確認することが前提である。
1、国の財政は破局同然でそれに組み込まれている地方財政も破局同然である。
2、その原因は国の地方財政の運営にあるがそれに踊らされた自治体にも責任がある。つまるところ税収を増やし、より効率的な事業に支出を振り向ける動機づけ(と権限)に乏しい地方財政の仕組み自体が事態を悪化させている根本的な要因である。
3、地方財政を破産させないためには、歳入面で増税(特に消費税)、他面で歳出の抑制・削減の両者を行うほかはないだろう。後者に相当痛みを伴う効率化が行われて初めて増税について国民の理解を得ることが可能になろう。
4、地方財政の効率化の方法として、市町村合併による基礎的な自治体の強化や都道府県の再編とそれに基づく分権的体制が有効と考えられる。