松阪会場の概要 2
日時 平成13年11月25日(日)午後1時30分〜4時30分
於 多気町民文化会館
第2部 パネルディスカッション
《コーディネーターより情報提供――宮本 忠氏》
○ 地方自治研究センターのホームページで募集したアンケートでは、賛成派約65%、慎重派約25%であった。中身については賛成か反対かということではなく、政府や県の方針として動いている中央集権的な市町村合併に対する疑問や意見が大多数みられる。市町村については、首長や議員のあり方について関心が大きい。住民主体で、住民自身が合併の主人公にならなければならないという意見、特例法を具体的に踏まえない議論はするべきではないという意見もある。また、パネラーと講師には専門的な見解や具体的で建設的な意見を聞かせて欲しいという意見がある。
○ アンケート結果より、ある程度住民の合併についての知識や議論は整理できていると判断できるが、意見や注文、疑問がある、どうしたらよいのかわからないというところも正直な意見としてでてきている。
○ 市町村合併を考えていく上で、市町村とは「住民の幸福と福祉の増進」を実現するためにあるということ、および合併の基本として、「完全平等、完全参画の自治」を実現する必要があるということを念頭におく必要がある。
《パネリスト意見――村井 勝氏》
○ 現在、多気町商工会には約220人の会員がいるが、各市町村の区域にしたがって各商工会があるため、市町村合併と商工会の合併は一体のものと考えられる。商工会では、昨年度からの県連合会による人事の一元化や、来年度からの広域連合制によるサポートセンターの設置など、市町村合併を見据えた動きがみられる。商工会の役員として、合併の動きの中で、地域の会員、職員の地位を守っていかなければならない。
○ できるだけ多気町の良い所は残しつつ、メリット・デメリットを十分に考えて市町村合併を進めてもらいたい。
《パネリスト意見――野呂 昭彦氏》
○ 現在、松阪地方の市町村合併検討会の座長を務めている。
○ 自分は合併推進論者だが、いくつかの疑問もある。国は国全体の基本的な制度に関わる仕事を担うべきであり、地方は地域住民の意思を十分に反映し、地域のあり方を地域の特色を出しながら確立し、地方政府といえるしっかりとした地方自治体をつくるべきである。
○ 地方政治を確立するためには、行政能力を向上し、住民参加を進めなければならない。様々な問題の中で、施策を科学的、戦略的に展開しなければならない。松阪には松阪の規模に合った施策展開が必要である。
○ 合併をした時の効果などを考える検討会を10市町村でスタートさせたが、仮にその10市町村が1つの市になったとすると、首長や議員、職員の削減だけで年間50億〜100億の削減効果がある。
○ 国と地方との役割はどのようにするのか、地方政府を確立する場合、県はどうするのかなど、国の役割、市町村と県の役割といった国の形を、国が提示すべきである。合併論が財政見地からのものばかりであると、地方の国に対する不信感は拭い去ることができない。
○ 合併によって夢は膨らまないため、合併によるメリット・デメリットではなく、合併しなかった時のメリット・デメリットを考えることが大切である。
○ 特例のアメ玉をもらって合併するためには、来年の春には協議会を立ち上げる必要があり、その前段として現在、合併の是非と枠組みをまとめるための検討会を10市町村で行っている。住民が理解を示す合併を行うため、市民との懇談会や委員会を設ける方向にある。
○ 阪上先生が言われたように、合併後の名前は「松阪」にはこだわらないつもりである。対等合併を十分な話し合いのもとで進めていきたい。
《意見交換――パネリストと講師間での質問等》
Q.デメリットの方が多かったように聞かせてもらったが、特にこの地方でのデメリットについてご指摘いただきたい。(村井)
(早川)こちらに住んでいないので抽象的な話しかできないが、岡山市については合併の20数年後も12の商工会議所、商工会は統合されていなかった。商工会の会員同士が密接なつながりを持つためには、商工会や商工会議所を一つに統合することはできないとのことであった。
Q.意見としてであるが、阪上先生からの、合併する際には出来るだけ大きな市、特例市を目指すべきであり、松阪という名称にこだわるべきではないという意見については、同感である。合併は対等合併が前提であり、名称や役場の位置など、十分に話し合いをして進めていくのは当然のことである。(野呂)
(阪上)会場からの意見としても、「松阪市だから松阪牛なのであれば、あさひ市となればあさひ牛として売り出せばよい」という意見があったが、松阪牛は努力の結晶としてつくられた世界的なブランドであり、簡単にあさひ牛に名前を変えて良いとうわけではない。
Q.松阪市は合併して行財政能力を高め、周辺市町村まで大切にしていくとのことだが、そのような投資能力が市町村に残るはずがない。見捨てられる地域がでてくるのが現実である。また、合併してお金ができたとしてもやがては国に吸い上げられ、地域で全て使えるわけではない。(早川)
(野呂)合併論議は国の行財政改革、構造改革の中の、国の仕組み、あり方を変えていくという大本の議論である。地域のことは地域に住む人が責任を持つ、地域のビジョンを持ちながら地域における事柄を考える。地域に合ったものを地域で計画してつくっていくことが大切だと考える。地域でのお金の使い方についても、地域のやり方で行うこと、活性化についても、地域の住民の合意により理解が進む形で行っていくことが大切だと考える。
《早川 鉦二氏――会場からの意見・質問への対応等》
Q.矢祭町では少子化、税収減の問題はどう考えているのか。
○ 少子化によって人口が減ると税収減であり問題であるという意見があるが、それよりも一番深刻なのは過疎の問題である。過疎化した村で合併すれば村の解体化が進み、地域に住めなくなる。少子化に伴う福祉の問題は合併の問題ではなく、他の施策の問題である。
Q.矢祭町での取り組みについての詳細を知りたい。
○ 矢祭町の取り組みの詳細については、よく把握出来ていない。
Q.合併をしなかった場合地方交付税が減少するが、どうすればよいか。
○ 合併しなかった場合ではなく、合併した場合に交付税が減少する。10年間はそのままで、その後5年間で少しずつ減額し、15年後には全く新しく改正になる。税金は国税が6割、地方税が4割であるのに対し、地方の仕事は国が4割を支出し、地方が6割を支出しており、つじつまが合わせるため補助金が下りてくる仕組みである。これでは地方分権とは言えず、国は税金の6割を地方に下ろすべきである。地方が衰退して国が栄えるということはあり得ない。
Q.スウェーデンにおいて都市から独立した場合、人口や経済状態はどうなっているのか。
○ 分離独立したコミューンでは、デメリットとして、地盤沈下が発生した際、財政力がないため工事ができずに住民を移転させた。しかし、移転した人々に対してその日のうちに避難する住宅を保証できたという、分離独立した小さな村のメリットもあった。
《阪上 順夫氏――会場からの意見・質問への対応等》
○ 合併をすれば様々な問題が全て解決するわけではないが、野呂氏が言われたように、合併しなかった場合のデメリットを十分に考える必要がある。
○ 財政をできるだけ地方にまわすことには賛成だが、地方にまるまる移譲することは問題である。しかも地方財政そのものが下りてくるというような状況では非常に困難であり、地方交付税を見直して減額していく形をとるべきである。
○ 地方が合併をせずにやっていくことはできない。多気町ではシャープの会社があるから安心だという意見もあるが、一つの企業に依存することは大変危険である。
《宮本 忠氏――終わりに》
○ 市町村の合併は、国や県の政策ではなく、生活そのものに関係があり、住民に関係のない合併論というのは机上の空論である。
○ 市町村とは何なのかということについて、「福祉の増進と完全平等参画社会の実現」というキーワードを付けておきたい。
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