尾鷲会場の概要 2
日時 平成13年10月14日(日)午後1時30分〜4時30分
於 三重県尾鷲庁舎
第2部 パネルディスカッション
《パネリスト意見──前川和俊氏》
○ JCなど広域的な連携による取り組みや、市町村合併に関する勉強会などはいろいろ行われているが、市町村合併に関する新聞記事等を見ると、東紀州地域の記事は他の地域に比べてわずかであり、活発な検討が進められていないようである。市町村合併は行政のためだけの議論ではなく、納税者のためにある議論ではないか。これからの時代、「自立」「自己責任」「自己決定」がキーワードであり、地域をどうしていきたいのか検討していくことが大事である。
○ JCとして市町村合併について審議をしてはいないが、一市ニ町で日常の活動も進めており広域的な視点で事業を進めているので、おそらく紀北地域一市二町で合併した方がいいと考えるメンバーが多いだろう。私としては、一市二町が合併することを前提に検討していただきたい。市町村合併の是非はいろんなところで語られると思うが、この地域にとってどうなのかを考えなければいけないのではないか。2005年に合併しようと思うと2002年の秋までに協議会を開かなければいけないといった期間が設けられているが、いろいろなところで集中してこの問題を考えていかなければいけない。
《パネリスト意見──中村レイ氏》
○ 市町村合併のメリット、デメリットを議論する以前に、どうして市町村合併をしなければならないのか。そもそも自治というものは自然発生的なコミュニティによるものだろう。昭和20年代後半の強制的な大合併により各集落の自治能力は著しく低下した。それなのに、さらに合併して地域が良くなるはずがない。結局は私たちの借金が増えるだけではないか。合併すれば確かにその場でアメはくれるかも知れないが、結局そのお金は自分たちで払うのだろう。
○ また、国の下に県、県の下に市町村がくるのも疑問である。2層構造でなく、国−新市町村の1層構造にすれば行政改革も進むのではないか。中途半端な市町村合併はする必要ない。1層構造の地方自治体も視野に入れていただきたい。一市ニ町の広域合併については基本的に反対である。市町村合併の前にまず三重県尾鷲区でいいんではないか。
○ それから、福祉でも介護とかの場合、お弁当をあたたかいうちに配れる距離となると、今の小学校とか隣組とかっていう単位ではないか。フランスでは50人以下のコミューンいう組織が1000以上も今でもあるらしいが、それは統廃合をいっさい拒否してるらしい。それが小さくても機能してるということは、日本でも小さな単位というのが大事だと思う。だから中途半端な市町村合併というのは、弊害ばかり多くていいことは一つもないではないか。
( 東 )国も市町村合併の先は都道府県制の見直しを検討してはいると思うが、確かに同じ仕事を県と市町村がやっているように思える。それがかえって行政のしくみを複雑にしているのではないか。市町村合併をすれば将来的に1層構造でもやっていけるようするのが望ましいだろう。
(岩崎)目に見える行政システムにしていくためには、受益と負担の関係がシンプルな方がいい。道州制にくくり直されてその際、最終的には県の役割が問われてくる。市町村合併は市町村がどう生き残るかの問題であると同時に、県がどう生き残るかの問題でもある。もし、北勢地域に大きな政令指定都市ができたとしたら、そこにおける県の仕事はいらなくなる。そうなると県の存在意義は県南部に対するサービスに専念できるかどうかである。そうでなければ県は要らない。個人的には県の業務は南部に集中配置するような、三重県民としては北勢地域と南の地域も同じようなサービス水準が提供できる、そういう仕組みを考えて、実際にサービス提供の担い手になるのが県の役割なのだと思う。そのワンセットで市町村合併、自治体の再編というのは考えられる必要があるのではないか。
また、最近所々で言われている道州制という話についても、結局、基礎的自治体と、道かあるいは州という大きな単位との関係であって、今度はそういうところでまた受益と負担の関係をできるだけはっきりさせていくような整備のされ方の検討がたぶん始まっているはずである。
《意見交換──会場からの意見・質問への対応等》
Q.より合併しやすいようにするため、社会資本の部分での合併特例債の制度はいい。しかし、後年で負担することに変わりないのでは。?
( 東 )合併特例債がこんなにたくさん許可されるとは夢にも思わなかったが、それにしてもあまりにもアメ玉が大きすぎる。やはりそのまま素直に受け取るのは非常に危険ではないか。
Q.今の自治体のかたちを残しながら広域連合を推進するのがよいのではないか。?
( 東 )現実的な方法で無駄を省いているということで、税金の無駄を省いていこうという考えはいいと思う。その延長として合併を考えるのは、市町村には手堅い方法ではないか。
(岩崎)広域連合については様々論じられている。その中で、自治体関係者がものすごく大きな思い違いをしているのは、広域連合という仕組みは実は自治体をつくるというしくみであったはずなのに、事務処理のしくみにしかなっていないことである。全国の介護保険の導入を契機にしてできあがった広域連合では、どこも、広域議会の選挙を独自に行ったところはない。言ってみれば、広域連合という仕組みは、仏は作ったが、魂をいれないまま放置されてしまっているようなものである。
そういう自治に対する制度的に与えられたものがあるにもかかわらず、それを使っていないしくみというものが、果たして合併というものの代替の手段になりうるものなのかどうか。私は広域連合よりも、使い慣れた市町村の制度を使うべきなのではないかと、その方が住民にとっても説明しやすいと思う。
Q.市町村合併を考える上で市町村の政策立案強化が大きなテーマになると思う。地方分権が進むなかで合併をしない小規模な市町村はこれからは生き残れないのだろうか。?
( 東 )現状のシステムでは市町村の廃止を宣告するわけにはするわけにはいかないので残っていくとは思う。しかし経済的に活力ある自治体として残っていくかということについては非常に疑問がある。地方交付税の削減によって行政水準が低下して耐えきれずに合併せざるを得ない、という意味では生き残れないということである。
(岩崎)先に話したとおり、行政事務のしくみが昨年変わり、政策形成能力をきっちり持った職員がたくさんいなければならなくなった。大きな自治体でも小さな自治体でも実はやっている仕事の種類はほとんど同じであり、大きな役所では専門職つまりその道のプロがいるが、小規模な市町村ではそういう職員をきっちりと確保することは厳しいと思う。ゆえに政策立案能力で各自治体間の格差というのがどんどんついていってしまうのではないか。都市間競争の中で勝つためには、やはり政策形成能力を高めなくてはならない。そのためには専門職をつくらなければいけない。その専門職を確保するためには小規模の町村では無理なのではないか。したがって小規模な市町村は生き残れないのではないかと思う。
Q.客観的にみて1市2町の合併パターンにおけるスケールメリットがあるかどうか
( 東 )あわせた人口2万5千ではスケールメリットはなかなか難しいと思う。しかも平地ではなく、地形的にもかなり制約を受けるものがあると思う。そういう意味で難しい面は多分にあるが、それでもそれなりのスケールメリットはあるのではないか。現在の地方交付税が一人あたり20万円弱だったものがおそらく一人あたり16万ぐらいまでに落ちる。そういう意味ではコストが2、3割削減されるというスケールメリットはある。
(岩崎)スケールメリットというのは結局、広域効率というのはどういう点があるのかということを明らかにすることである。その一方にある絶対狭いところでないと有効ではないものがあることを前提にしてスケールメリットをいくつか上げさせてもらえば、一つは人的資源。合併することによって職員の人的余裕が若干でるので、それは多分スケールメリットといえるだろう。経費の節減などから言うと、たとえば議会は、一市二町分あった経費が新しい市の部分だけで良くなるわけだから、経費的に言えばスケールメリットがあるだろう。だが、スケールメリットで議会が一つになったということでいいのかどうか。というのはやはり検討しなくてはいけない。しかし、弊害になるものの多くの部分は様々な制度を駆使することで突破できるのではないか。
《その他意見》
(参加者):それぞれの事業でのメリット、デメリットをしっかり考えていくことが、やはり一番大切なことではないか。それと、先ほど話にあった政策立案能力だが、小さい自治体は政策立案能力がなく、そういう意味で市町村合併が一つの有効な手段ではないか、というのはよく言われる。しかし、果たしてそうなのか疑問である。合併したから政策立案能力が上がるかどうかではなく、施策立案能力を上げるための検証なり、まずプロセスをつくることが大切なのではないか。それでは、どのぐらいの規模で政策立案能力があがるのか。例えば1市2町が合併した、または東紀州全部が合併したときにはたしてそれで政策立案能力があがるかと言ったら、それは未知数な問題だと思う。仮に小さな市町村であっても、職員のやる気次第によっては、いろんな地域が活性化できている。
今、自分たちの地域をよくするために、もっと踏み込んだ議論をしていく必要性があるのではないか。前川氏が話していた、地域における議論の盛り上がりがないということが、やはり一番大きな問題だろう。2005年までの中で住民にとって本当にそれがいいか悪いかということはもっと議論していかないといけない。まだまだ議論している内容がうわべだけであって、もっと根付いた議論をしていかないと間に合わないような状況になってきているのではないか。
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