伊賀会場の概要 1
日時 平成13年10月6日(土)午後1時30分〜4時30分
於 阿山町保健福祉センター
第1部 基調講演「市町村合併を考える」
《講演のポイント──阪上順夫氏》
○ 東京都東久留米市から委嘱を受け、合併を含めた行財政のあり方を検討した。結果、合併すべきという方針を打ち出した。当市はベッドタウンであり、昭和30年代に人口は急増したが、10万人強で横ばいとなった。先行きを考えると、財政難だけでなく、少子高齢化など、様々な面で閉塞状態にある。打開策が求められ、現在の市では対応できず、周辺の市と一緒になって規模の拡大を図るべきという結論になった。
○ これは全国どこの市町村においても、ある程度共通の問題である。1990年代からの長期不況に伴う、政治経済の「空白の10年」につくった多額の借金を21世紀に持ち越してしまった。まもなく人口もピークを迎える。これまでの方式では乗り切っていけないことから、構造改革が何よりも必要であるが、地方でも同じことが言える。
○ 過去の市町村合併では、規模のメリットを生かし、シビルミニマムという言葉で表わされるように、地方の生活レベルを東京のレベルまで引き上げることができた。東京の施設に負けないような公民館、市民会館などの施設が整ったのも、合理化できたからであろう。
○ 今後は、これまでのような公共事業は推進できない。高齢化も進み、社会福祉などの対策費が増え、その一方で社会を支える年齢層が減っていく。そのまま放っておいて赤字になっても、国が助けてくれるという考えはこれからは通用しない。地方分権推進のなかで、地方は自立しなければならないが、先に述べた問題が立ちはだかっている。
○ 画一的でなく、自己責任、自立性を持ったまちづくりをしなければならない。子孫にできるだけ良い地域として残していかなければならない。そのために、現在のまちの規模でよいのかどうかを考える時期に来ている。できれば10万人くらいの規模を持つということが、将来の高齢化、少子化に向けての1つの選択だと考える。
○ 構造改革には痛みを伴う。市町村合併では、地位を失うことを恐れる議会議員、首長が抵抗勢力であると思う。しかし、伊賀地域においては、議会議員が積極的に取り組んでおられると聞き、敬意を表したい。
○ 合併特例法は、平成17年までの時限立法である。アンケート結果では、「いずれ合併が必要」という考えが最も多い。しかし、メリット、デメリットを踏まえ、10年、20年後の見通しを立てて、今、判断すべきだ。合併の見通しが立つのならば、国の優遇措置が得られる今のうちにすべきだ。さもないと、自分たちの力だけで合併しなければならなくなる。
○ 長期的な見通しを立て、21世紀、22世紀の子孫のために、伊賀地域をどうしていくべきか、みなさん方で判断していただきたい。
《講演のポイント──早川鉦二氏》
○ 1969年に合併した岡山市を検証した結果、大変な問題があることに気づいた。岡山市と合併した旧西大寺市の商店街はかんこ鳥が鳴いている。もちろん、合併のせいだけではなく、モータリゼーションや郊外へのスーパーの出店なども原因だが、一番の問題は、大きくなった岡山市に依存し、地域の人が自分たちの地域のことを考えなくなったことである。自治意識の希薄化が大きな問題である。
○ もう一つの問題は市民福祉である。岡山市において、市民生活に関して掲げられた政策目標と比較すると実際には、下水道、消防、公営住宅などの整備も目標を大きく下回り、同規模の市と比べても十分でない。確かに、中核都市として経済的には発展したが、市民福祉がないがしろにされている。
○ 今度は、スウェーデンの地方自治を調査した。戦後、2回の市町村合併を経て、2,500から289の市町村数になり、福祉、地方自治もすばらしいという認識だった。まず、日本人とは主権者としての意識、政治への意識が違う。自分の考えを持ち、政治への信頼がある。民主主義の伝統もある。そういう市民ゆえに、行政区域が広くても住民自治がうまくいくのではないかと思った。しかし、実際は矛盾だらけである。住民の意見を行政に反映するよう、市域を14の区域に分けて地区評議会をつくり、福祉、教育、文化などが住民に委ねられている。そうやって、住民意志を行政に反映している。それでうまくいかない場合は、分離・独立している。日本とは逆である。
○ なぜ、今、市町村合併なのか。広域的な行政が必要なのは賛成だが、市町村合併とは飛躍しすぎである。国、県はネックとなることだけ取り除けばよいのに、合併を主導している。これは、住民自治と相反しているのではないか。地方分権というのなら、財源の委譲も、もっと行われなければならない。国は、外交、防衛など国際的な政策に力を入れたいのだと思う。そのために、国内の細々としたことは県、市町村に任せたいという目論見ではないのか。
○ 少子高齢化が理由に挙げられるが、政策が違うと思う。女性が介護、子育てをしながら働けるような社会システムをつくらなければならない。過疎については、合併すればさらに過疎化が進むことは、昭和の大合併で歴然としている。役場の周辺だけが市街地化し、あとは廃屋が増えているのではないか。
○ 市町村合併することは、合算効果として財政基盤が強化されること、節減効果として職員の数が少なくて良いことなどがあるだろう。しかし、それがまちづくりに望まれているのだろうか。長い目で見ると、国の財政再建のために市町村合併を進めているのだと思う。財源が浮いた分を自分たちのまちづくりに使えると考えているなら、それは甘い。
○ 21世紀は、住民参加と環境の時代である。市町村合併は、住民参加と逆行している。環境問題を解決するのではなく、国土を荒廃させる。長い目で見ていただきたい。
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