鈴亀会場の概要 2

日時 平成13年12月1日(土)午後1時30分〜4時30分
於 鈴鹿市労働福祉会館


第2部 パネルディスカッション
《コーディネーターより情報提供──宮本 忠氏》
○ 今回のシンポジウムのアンケートにおいて、市町村合併に賛成とする意見が65%程、反対・慎重は25%程であり、合併推進の意識が高く、その他の情報源を合わせてみても、やはり合併を推進する声が大きい。しかし、それには「このような条件のもと」とする人が多く、無条件で市町村合併を進めるべきとする人は少数である。
○ 前回の松阪会場まで参加させてもらって感じたことが2点ある。一つは、「地方分権推進一括法ができたのちにおける市町村の存在意義は「福祉の増進」にあり、その意味でも地方分権は進めるべきであるし、自立した活き活きした地域づくりが必要である。」もう一つは、「市町村合併を推進していくためには「完全平等参加型社会の実現」が不可欠である。誰しもが完全に平等であり、活き活きと参加できる社会づくりなくしては、市町村合併の議論が、議論のための議論になってしまう。」ということである。
○ 先の両先生の講演の中で都市内分権と言っていたが、私としては市町村合併とは権力の集中だと思うので、結局権力を分散させたままでは変わらないのではないか。集権化の中での分権を考えることが大事だろう。
○ 自治体というからには「共同体意識」が必要であり、どうすれば新たなまちの住民どうしが共通した意識をもてるか、しっかりと議論することが大事である。また、合併にあたってそれぞれの地域が持つ文化や伝統をどう継承していくのかよく検討することが、実際の市町村合併を考えるためには必要不可欠である。

《パネリスト意見──寺嶋吉明氏》
○ 関宿の町並み保存をしているが、果たしてこの圏域の人がどれだけ関宿のことを知っているだろうか。ここにいるパネリストの方は知っているということだが、中には観光地だと思っている人もいるようである。関宿は国宝や重文に準ずる伝統的建造物群保存地区に指定されているもので、その地域の中で関町民の約半分が生活している。そのように、遺産が残されていたこと、地域住民の大半が関宿に直接関連し、肌で町並み保存の重要さを感じられたことなど、ある意味関町は恵まれていたと思う。
○ 大きなまちになるほど文化・文化財が見えにくいように思われる。大きなまちでは町並みを残すとしても一地域からの陳情となるだろうし、その地域の実情として肌で理解することは難しくなるのではないか。また、同じまちの中で足の引っ張り合いになることもあるだろう。昭和の大合併後、地域同志が足の引っ張り合いをして地域の特徴がなくなっていったまちが多いように思う。市町村合併をするにしても、地域どうしが利害を考えるのではなく自分たちの文化をしっかりと考えることが大切だろう。

《パネリスト意見──寺井和子氏》
○ 市町村合併は国や県の動きの中で行われていくだろうが、結婚といっしょで縁組みなので、魅力のあるパートナーであるのかの見きわめや、お互いの長所短所を認められるのか、そして今後いっしょにどんなまちづくりを行っていくのかを考えていくことが大事である。
○ しかし、合併特例法のタイムリミットもあるので、理念や総論ばかりでなく、例えば税金は上がるのか下がるのか、国保料金はどうか、水道料金はどうなるのかなど、具体的な身近な部分がどう変わっていくのか知りたい。
○ 住民にとってのメリット・デメリットの議論が不十分ではないか。まだまだ自分のこととして議論するまでには至っていない。合併前と合併後で、行政がどう変わり、また生活がどう変わっていくのか、情報収集と情報開示に努めていただき、行政と住民のコミュニケーションを図っていきたい。

《パネリスト意見──市川利一氏》
○ 私は日頃から労働者の立場で考えているが、それは納税者という立場とある意味近いものでもあるが、労働者にとって勤務地と居住地が違うことはよくあることであり、それぞれの地域で平等なサービスを受けられるかが大きな焦点であって、市町村合併による弊害がなくなれば前向きに考えられると思う。
○ 2市1町で考えたとき、その主産業は地域によって違いがある。工業を中心に考えるとした場合、鈴鹿を中心に核が形成されると思うが、その時、農林水産業は地域の産業として守られるのか。また、合併によって雇用を創出できるのか。そういったことも考えなければならない。
○ 企業でも、マイカルが、より大きな形で合併せざるをえなかったように、行政もその状況に応じた柔軟な対応が必要なのだろう。産業界から見れば市町村の垣根なんて元々ない。行政の中で垣根をなくす議論をしてもらうのもいいことだろう。

《意見交換──会場からの意見・質問への対応等》
Q.国や地方の債務が666兆円あるが、合併すれば返していけるのか。?(寺嶋)
( 昇 )合併しただけで返すことは到底無理な話である。日本全国、広域市町村圏の単位で300程に合併すれば、年間8〜10兆円のコストダウンが可能であるという試算が出ている。この合併案はものすごくダイナミックな合併であるが、それでも合併だけでは元本だけで66年、利息も合わせれば100年はかかる。そのため、市町村合併などの行政改革と増税の両方をやって、なんとか返すことのできる金額である。
(今川)住民生活に対する合併の効果について関心は高いと思うが、合併したら福祉がどうなるのか、などという行政から引き出そうとする考え方をやめない限り経済的な問題の解消はできないだろう。そうではなくて、自分たちでどのような地域にしていくのかを自分たちで考えていくため、住民を巻き込んでいくことが大事である。
(宮本)権限の委譲が進んでいるが財政面はそのままであり、このまま進んでも地方分権は上手くいかないだろう。国に財政面で自治体を手厚く支援するように提言していかないと、平成の新中央集権体制を作りあげるだけになってしまう。
Q.これまで行われてきた広域行政事務組合などを活用して対応はできないのか。?(寺嶋)
( 昇 )一部事務組合は、選挙で代表を選んでいないなど、住民に対し不透明であるという大きな欠陥がある。また、意志決定をする際、構成市町村の全てがYesと言わなければ決定できず、利害関係の調整が可能な、限られた分野以外での活用は難しいだろう。
(今川)一部事務組合の他に広域連合もあるが、お互いの足の引っ張り合いや、意志決定が結局できないという事態が起こっており、広域連合ですら上手くいかないのではないか。
Q.市町村合併になれば中心と周辺の格差ができないか?(寺井)
( 昇 )何もせず放っておいたら当然格差は生じるだろう。ただ、そういうことのないように、都市内分権をつくることが大事だろう。
(今川)格差は生まれるだろう。そのためにも、地域審議会など、地域の政策決定の場をどうしていくのか真剣に議論しなければならない。現在の議論のなかでは地域審議会を少し安易に捉えがちではないか。
Q.合併特例法の期限に間に合わせるためには、住民としてはどんなスケジュールで動かなければならないのか?(寺井)
( 昇 )2005年に間に合わせようと思ったら、手続きに22ヶ月かかると総務省が試算しているので、単純に引き算して、あと1年の間にどのような市町村合併とするのか決めなければならない。ただし、無理矢理、間に合わせることはしない、という考えもあってもいいだろう。2005年というのは財政面の優遇措置の期限だけであって、地域として、よりよい合併を実現するためには期限は隣に置いて、しっかりと議論することを優先させることも場合によっては必要だろう。
(今川)仮にあと1年だとしても、例えば公募で集まった住民がしっかりと地域のことを議論し、そういった輪を広げていきながら、検討を進めていくべきだろう。また、そのような活動情報を行政に対し発信していく「逆情報公開」も大切である。
Q.この2市1町で産業に関する検討会をつくろうとした場合、天草地域と同じようにできるだろうか。業種別に分かれざるを得ないのではないか?(寺井)
(今川)天草地域の場合は観光しか生き残る道がないためある意味テーマがわかりやすく、異業種交流によって観光を盛り立てていこうとしているが、それでも四苦八苦している。鈴亀地域でもテーマが出せれば産業の創出は大いに可能だろう。業種別に議論するのもいいが、産業界全体として議論し、産業界の方からまちづくりに対し「地域をこう変えていくと産業面でこんなメリットがあり、それが地域にこれだけプラス効果を生み出す」と提案していけるようにしていくことが望ましいだろう。
Q.国および地域の借金を返すためには、市町村合併などによる行政の効率化と、消費税率のアップなどによる増税が必要だと言われていたが、消費税率をあげないですむ方法はないか。消費税率のアップは安易すぎる方法ではないか。
( 昇 )あくまでも666兆円の借金を返すための一つの例として、既存の税体系のなかで消費税を使うとしたらこうである、という説明であって、今のままの消費税で、ただ税率を上げたらいいと思っているわけではない。
ただ、この借金を返すためには増税は避けられないだろう。しかし、増税をする前に行政改革をしなければならない。その中で一番効果的なのは市町村合併だろう。ただし、それだけで解決できるわけではないので増税と合わせて対応する、という考え方である。
Q.合併をするにしても市町村間で情報公開のレベルに格差があるように思われる。
(今川)当然、市町村合併の大前提として情報公開が不可欠である。レベルの格差があるということだが、そういったことを住民の方で分析し、行政に「逆情報公開」してもらうのがいいのではないか。
「逆情報公開」とは、これまでの行政システムでは住民側から投げかけても担当レベルで止まってしまうことが多く、これからの新しいまちづくりを行うにあたっては、住民から提言してきた意見をきちんと受け止める場・しくみを設けていくことが大事であって、それら情報公開とは逆の手順を踏むしくみを「逆情報公開」と呼んでいる。
( 昇 )情報公開は必ず必要だが、ただ公開するのではなく、わかりやすく伝えることが大事である。合併の議論に関しても、例えば、合併した場合は今後こうなると予想され、合併しない場合はこうなると考えられる、といったことを試算してみて、それを住民が分析し、その結果を受けた代替案を用意しながら議論を深めていくことができればベストだろう。
Q.財政の建て直しを考えるなら、地方自治体がもっと公共事業に責任を持ち、垂れ流し的な事業を廃止することが先決である。なぜか知らないうちに借金が増えていって、それを住民に負担してくれと言われても納得できない。
(今川)公共事業をどう考えていくかは、市町村合併をするしないに関わらず行政の大きな課題である。三重県は事務事業評価システムによる評価を行っているが、そのような手法も取り入れながら、情報公開しつつ住民といっしょに考えていかざるをえないだろう。ゆくゆくは、NPOによる評価など外部で評価していくことが求められる。
Q.合併の議論のなかでは人口の話ばかりである。過疎のまちがこれまで議論してきた治山・治水などは触れられていない。そのようなことで過疎地域はよくなるのか。
( 昇 )合併で全てを解決することは不可能であり、過疎地域の抱える問題は、合併だけでなく他の手法も合わせて解決していかなければならない。ただし、一般的には合併した方が解決する可能性は高いだろう。
(今川)市町村合併だけではさらに過疎化へ拍車がかかるかもしれない。これは合併議論ではなく、国や県のレベルでもっと考えなければいけない問題である。この問題を解決するには、個人的には集団移転しかないのではと考えている。治山・治水は、そのこと自体に意義を与え、それに見合う報酬を用意しなければ無理ではないか。
Q.一般論として、自治体のあり方、適正規模をどのように考えているか聞かせて欲しい。
( 昇 )平坦地で歴史・文化的なものも考慮しなければ、適正であろう人口規模の目安はあるが、立地条件によっても違うし、その目的によっても違う。また、歴史や文化を無視して一つにするのも望ましくないだろう。仮にそれらがクリアされたとしても面積の問題もあるだろう。画一的な基準で判断するのは難しい。
Q.都市内分権を進めることは、かえって費用がかかるのではないか。
( 昇 )単純に今の役場がそのまま残るわけではない。業務によっては大きく人員が減るだろうし、事務はNPOに委託していくこともあるだろう。また、市民活動を推進するにあたって、人口規模が少なければその推進体制・人員も十分ではないが、10万人以上になると行政職員も1,000人を越え、人員的にNPO推進室などが設置可能になる。それによって市民活動が活発になり、それら市民活動と行政が役割分担をすることで行政の負担は減るのではないか。
Q.都市内分権は法的に担保できるのか。
( 昇 )まだ実体がないのに先に法で決めてしまうのはよくないのではないか。実験としてまずやってみて、その結果を踏まえ修正しながらつくりあげたシステムを法制化する方がいい。
Q.全ての地区で地域審議会のようなものを立ち上げた方がいいか。
( 昇 )一言で言えば、立ち上げた方がいい。しかし、それは民意で判断すべきことであって、義務づけすべきものではない。都会の論理に合う形で義務づけたりするのは自己矛盾だろう。


(宮本)何回かのシンポジウムの開催のなかで、シンポジウム自体の議論が深まってきている。どうすればより良い市町村合併ができるかを視点として議論になってきている。
これまでの議論のなかで、議員の役割や住民の役割の議論がなかったように思う。議員の果たす役割も大事であり、また住民の役割も大きい。
様々な例示も出されたが、あくまで例であってモデルではない。同じようにするのではなく、自分たちの地域にあったスタイルを見つけていかなければならない。



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